※この記事は訓練中の方向けの内容です。初学者様は前回の記事を一度読まれることをお勧めします。
晴れの日と曇りの日、飛び方が違う?飛行機の2つのルールとは
有視界飛行方式(Visual Flight Rules, VFR)は、VMCのもとで可能な計器飛行方式による飛行以外の飛行を言います。これはパイロットが目視によって障害物や、空中のほかの航空機、雲などとの間隔を保ち、それらとの衝突の回避をパイロットが責任を負って飛行する飛行方式です。
法律的な観点
少し曖昧な定義
航空法ではVFRとはこういう飛び方だ!という風には書いていません。
じゃあ、どうやって区別するの?といいますと、
計器飛行方式による飛行以外は全て有視界飛行方式!!と定義されています。
施行規則での規定
航空法施行規則 第6条の2より「計器飛行方式による飛行以外の飛行」として規定されている。
こんな回りくどい書き方になっている理由は、「例外を無くすため!」です。
計器飛行方式(以後IFR)、有視界飛行方式(以後VFR)のどちらにも該当しないような飛行方式が存在しないように、こういった書き方がなされています。
ちなみに、法律の条文ではよくある表現ですので、こういった書き方に嫌悪感を示さないよう慣れていく必要があります。
条件と制限
条件とは、「できる場合」のこと。
制限とは、「できない場合」のことです。
条件:定められた有視界気象状態のもとでのみ飛行が可能
有視界気象状態とは、つまり天気がいい時のことで「VMC (Visual Meteorological Condition)」と呼ばれます。(後ほど詳述)
制限:一部の空域では許可の必要や、高度の指定があったり、そもそもVFRでの飛行が禁止されている。
自由度が高いVFRですが、どこでも、いつでもってわけにはいきません。
管制区および管制圏内で管制機関から指示を受けた場合は、それに従う必要があります。
以下の場合は、飛行に際し許可をもらう必要があります。
- 管制圏の通過
- 特別管制区内の飛行
- 29,000 ft 以上高度での飛行
また、管制官がいる空港(タワー空港)では、許可をもらわない限り離着陸することはできません。
その他にも、以下のように900m(3000ft)以上を巡航する場合には区分された巡航高度に従う必要もあります。
飛行方向(磁針路 MC) | 高度 |
0° 以上 ~ 180° 未満 | 1,000 ft の奇数倍に500 ft 加える 例:5,500 ft |
180° 以上 ~ 360° 未満 | 1,000 ft の偶数倍に500 ft 加える 例:6,500 ft |
表にまとめる
条件・場所 | VFRでの対応 |
---|---|
管制圏の通過 | 管制機関から通過許可を得る必要がある |
特別管制区内の飛行 | 管制機関から進入許可を得る必要がある |
高度29,000フィート(FL290)以上 | VFRでの飛行は禁止されている |
管制官が配置された空港(タワー空港)での離着陸 | 離陸・着陸ともに管制官の許可を得る必要がある |
管制機関からの指示を受けた場合 | 指示に従う義務がある(例:進路変更、高度指示など) |
飛び方が自由な分、VFRで完全にパイロットの裁量で飛ぶことができるような空域は、実あまり多くありません。
VMC (Visual Meteorological Condition)
VFRで飛行することができる気象状態をVMCと呼びます。
具体的には以下の通りです。
空域の区分 | 航空機の区分 | 飛行視程 | 雲からの距離 上方 | 雲からの距離 下方 | 雲からの距離 水平 |
3000m 以上 | 8 km | 300 m | 300 m | 1500 m | |
3000m 未満 | 管制区、管制圏 情報圏を飛行 | 5 km | 150 m | 300 m | 600 m |
3000m 未満 | 上記以外の空域 | 1.5 km | 150 m | 300 m | 600 m |
300m 以下 | 1.5 km | 雲から離れて飛行 | 雲から離れて飛行 | 雲から離れて飛行 |
上記の気象状態を満たさない場合には基本的にVFRで飛行することはできません。
※Special VFRといって、例外的にVFRでの飛行をすることもできます。
上記以外の飛行状態を「計器気象状態(IMC)」と呼び、原則としてIFRで飛行することが義務付けられています。
有視界飛行方式の限界 施行規則第5条
VFRは他機や障害物との間隔設定を、パイロットが目視によって行う性質上、多くの制約があります。
回避責任
空は広いようで、意外と密集しております。それは、飛行機のスピードと空中では静止することができないという性質から、広い間隔(セパレーション)が必要となるからです。
そんな空の交通間隔をパイロットの目でとる、VFRは交通量の多い空域ほど衝突のリスクは大きくなります。
また、他の航空機だけでなく、VMCを維持するために、雲との間隔も取らなければいけないため、結果的にIFRで飛ぶよりも難易度やワークロード大きく増加することも少なくありません
管制機関や空域との関係
一部の空域や状況下では、たとえVFRであっても管制機関からの許可や指示を受ける必要があります。(先述)
IFRとは異なり、飛行経路や高度の指定は原則行われませんが、交通量が多いような空域では、入域のためのクリアランスが必要になることがあります。
自由度とその代償
航路や高度選択の柔軟性、飛行計画の作成や変更が比較的容易。手軽に飛ぶことができるという利点がある一方、飛行中の安全を確保するために、パイロットの仕事量が増えたり、気象条件の制約が非常に強い。といったデメリットも少なくありません。
では、VFRが適している運航とは具体的にどのようなものなのでしょうか?
VFRが適するフライト
天気がいいとき(VMC)
これは、適するというか、そもそも天気が良くないとVFRで飛べないんですが、、、
出発地から目的地(巡航経路上も含めて)VMCを維持できる予報で、それが確実な場合には、VFRで飛行するほうがメリットが大きい場合が多いです。
逆に、少しでも天候に不確定要素がある場合には、VFRのメリットは大きく損なわれてしまうため、安全に飛行するためにも積極的にIFRクリアランスを取得しましょう。
簡易な飛行経路・低高度での飛行
遊覧飛行や非常に短距離のフライトに関しては、VFRの自由に経路選択をできるという点がとても大きなメリットになります。
少ないですが、一部の短距離路線を運航するエアラインでは、VFRを主とする運航をしているところもあります。
時間的な制約がないとき
VFRとIFR機が同時に管制圏に入ってきたら、どちらが優先される思いますか?
IFR機です!
エアラインが来るような空港をVFRで飛んだことがある人は、待たされたことがあるんじゃないでしょうか。
よほどのことが無い限り、VFRが優先されてIFRが待たされるなんてことはほとんどありません。(無くないけど…)
何時にまでに到着したい!ってようなフライトでは、飛行計画から算出された、到着予定時間に合わせて自分の管制枠がしっかりと確保される、IFRの方が適していると言えます。これは、エアラインが多く飛来するような、大きな空港ほど強く言えるでしょう。
飛行中に飛行方式を変えることも可能!
フライト中に急に天気が崩れてきたときや、いったん経路を外れて景色を楽しみたいなって時には、飛行方式を変えることもできます。
VFRからIFRに変更する際は、出発承認(CRAFTクリアランス)のようなものを飛行中に取得することで変更可能。
IFRからVFRに変更する際は、”Cancel IFR”の用語で変更可能です。
Special VFR(特別有視界飛行方式)航空法第94条
また、VMC未満になってしまったが、IRを持ってないなどの理由でどうしてもVFRでしか飛行できない場合は、Special VFRという方式で飛行することも可能です。
ただし、これはやむを得ない場合に限った運航で、単純に、天気が悪いときはスペシャルVFRで飛行する!っていう認識は完全に間違いですので気を付けましょう。
※今後の記事で詳しく解説予定です。
まとめ
有視界飛行方式(VFR)は、航空機の基本的な飛行方式の一つであり、目視によって航行の安全を確保するという原則のもとに運用されています。
その制度的な位置付けは、「計器飛行方式以外の飛行」として定義され、明確な気象条件(VMC)と運航上の制限を伴う飛行方式であることが法律によって定められています。
運用面では柔軟性の高い方式ではありますが、その一方で衝突回避や気象判断といった要素を操縦者個人の判断に委ねているという特徴があり、これがVFRの限界にもつながります。
自由な運航を可能にする飛行方式であるからこそ、その適用条件と制度的な背景を正しく理解し、安全かつ合理的に運用することが求められます。
その理解が欠けたまま形式的にVFRを使用した場合、かえって安全を損なうことになりかねません。
VFRの制度と実運用を結びつけて理解することで、飛行の選択肢を正しく判断する力が養われ、安全運航の基盤となります。
おまけ:試験時の体験談
PPLやCPLの実地試験では、VFRで野外飛行(飛行計画に従ったフライト)をするのですが、それがめっちゃ難しいんです笑。
飛びながら、計画経路と実際の軌跡とのずれを地上の物標をみて算出します。
機首は完璧に維持されているという前提のもと、計画とのずれは風が変わったからだ!ということで、実際にいま吹いている風を逆算します。(具体的な方法も今後解説しようかな)
風が変わってたとしたら、到着予想時刻も変化するので、それも正確に求めます。(予想と実際の時刻とのずれが3分以内である必要がある)
そんなことをやりながら、VFRなので雲があったら避けたり、気流が悪かったら減速(速度を変えると到着時間が変わるからまた再計算)。試験官から、「もしここでエンジン壊れたらどうする?」みたいな質問がきて、法律の範囲内で安全を損なわないような適切な対処を答える(飛びながら)。
マジで死ぬほど大変です!
これがまた、エアラインじゃやらないことってのも、この試験意味あるのか?って思う一因なんです笑。
まぁそんな感じで、試験の時は試験用の技術と対策が求められて生きます。
そういう試験時のことも需要があるかなと思うので、書いていきたいなと思っています。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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